マーケティングオートメーションの成果を向上させる『件名AI』

会社紹介

マーケティングオートメーション(以下MA)とは、企業のマーケティング業務を自動化し、社内の業務効率化や成果向上を図る技術です。当社はAIを活用した独自のツールを開発し、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。
設立は2005年11月ですが、途中10年間ほど日本での事業を休止し、上海で仕事をしていた期間がありました。そのため、今回は二度目の起業になります。当初、手掛けていたのは神奈川を軸にした地域密着型のネット広告事業でした。2021年4月に再起業を果たしてからは、ネット広告事業で培ったビジネス効果を創出するノウハウや、革新的なAI技術を活用し、MAという新たな領域にチャレンジしています。
マーケティング業界には、新規会員向けに「広告のムダ打ち」、既存会員向けに「メール配信のムダ打ち」と呼ばれる課題が山積しています。今回受賞の「件名AI」というサービスを広げていくことにより、こうした課題に一石を投じたいという想いもあります。MAという未開拓の領域を切り拓くリーディングカンパニーを目指して、一歩ずつ確実に進んでいきたいと思っています。

基本情報

株式会社グローカルMA

〒210-0005
神奈川県川崎市川崎区東田町11-27
メットライフ川崎ビル4階

2005年の起業の後、日本での事業を一旦休止した私は、中国・上海でネット広告ビジネスの拡販に挑戦していました。しかし、徐々に中国の現地企業との競争が激しくなり始め「この領域で生き残っていくのは厳しいかもしれない」と思案していたところ、マーケティングオートメーション(MA)という次世代の技術に出会いました。「ネットやSNSからの情報過多、少子化による人材不足などに悩む企業がこの技術によって救われるかもしれない」と考えた私は、日本帰国後に在籍していた会社の新規事業としてMA事業をスタートさせました。しかし社内プロジェクトという制約もあり、期待通りには進みませんでした。そこで「自分でやるしかない」と考えて、日本で再び起業することを決めました。

国内では2016年頃からMAツールが出現し始めましたが、あまり浸透していかない印象でした。というのも、これらのツールのほとんどがBtoB(対企業)に特化したものだったからです。BtoBのマーケティングはそれほど複雑ではなく、顧客の数も少ないので、費用をかけてMAツールを使い切る必要がないのです。一方、本当に大変なのはBtoC(対カスタマー)のマーケティングです。こちらは膨大な数のユーザーをいくつかのセグメントに分類し、それぞれのターゲットに向けたシナリオを作っていく必要があります。当社は、より課題の多いBtoCのMAに特化した業務支援やツールを提供していくことに決めました。

企業にとって特に負荷がかかる作業は、ユーザーに送付するメールコンテンツの作成です。テキストの作成だけならChatGPTを始めとした文章生成AIを利用することも可能ですが、HTMLメールになるとそう簡単ではありません。外部に委託したり、自分の手で作成したりと試行錯誤している企業もありますが、これらの作業を自動化することはまだ難しい状況です。しかしそうやって力を注いで作ったコンテンツも、メールが開封されなければそもそも読んではもらえません。多くの人は、メールの件名を見て中身を読むかどうか判断するでしょう。「面白そうだな」「読んでみようかな」と思わせることができれば成功です。逆に、件名で興味を引けなければ、どんなに良いコンテンツやHTML素材をつくっても意味がありません。まず重要なのは「メールを開けてもらうこと」で、その鍵を握っているのが「件名」なのです。 メールの開封率に伸び悩む企業ほど、件名をおざなりにしているケースが多いことに気が付いた私は、件名作成の重要性を再認識。「ターゲットそれぞれに合わせた件名を作り、配信する」という手法を思いつき、「件名AI」として商品化することにしました。

「件名AI」は、ChatGPTなどのAIを活用して最も効果的な件名を生成、評価し、メールマーケティングの効果を最大化させるサービスです。顧客ごとに開封率の高い件名を予測する「件名評価AI」と、商品紹介ページや送付文面から件名候補を生成する「件名生成AI」の2つの機能から成り立っており、それぞれ特許を取得しています。 提供開始に先立ち、株式会社SBI新生銀行さまからの協力を得て、約1ヶ月間本サービスを試験導入していただきました。その結果、対象となるメールの開封率が50.2%から59.6%へ大幅に改善するという結果を出すことができました。

現状の課題は2つあります。1つは、このサービスの売れ行きが芳しくないということです。これには、MAが日本でまだ浸透していないこと、中小企業が導入しやすい料金設定になっていないことが要因として挙げられます。このサービスを広げていくには、営業やPR活動を積極的に進めていくとともに、料金設定を見直すこと、場合によっては無料化の検討なども視野に入れていく必要があると思っています。
もう1つは、データ活用ビジネスの難しさです。「件名AI」が扱うデータは個人情報ではないものの、それに準ずるようなデータを当社のAWSと連係させることになります。そのためデータの扱いには細心の注意が必要で、顧客企業にも積極的な社内調整が求められます。その点で導入をためらわれることがないよう、当社は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得し、安心してサービスを導入いただける体制を整えています。

現在、日本にはMA業務支援に特化した企業はあまりありません。ニッチな業界だからこそ、当社独自の価値を提供できるチャンスだと言えますが、私としては「MAという市場自体をもっと広げたい」という目標もあります。そのためにMAの認知度向上に努め、もっと使いやすいツールを開発するなど、課題を一つ一つ解決しながら、市場の拡大に貢献していきたいと思っています。
先に記載したように、従来のマスマーケティングには「ムダ打ち」と呼ばれる部分があります。ユーザーが求めていても、いなくても「とにかく広告を打ちまくる」というやり方です。すでに購入した商品なのに、広告が表示されたり、ダイレクトメールが送られてきたりする状況に、うんざりしている人もいるのではないでしょうか。
受信する側に興味があればいいのですが、まったく興味のないメールで受信ボックスが溢れ、仕方なくブロック設定を強いられる状況は、現在の時代の流れと逆行しています。ビジネスの世界では、ESGやサステナブルの重要性が叫ばれているのに、マーケティング業界には無駄なことが山ほどあります。相手が求めていないものは減らし、受け手も送り手もお互い満足できるコミュニケーションを実現することが、これからのマーケティング業界に求められることではないでしょうか。「件名AI」はその第一歩になるサービスだと自負しています。

かわさき起業家オーディションに参加したことで、中小企業の方々ともお話する機会をいただき、視野が広がったことに感謝しています。現状の課題として、料金設定の見直しを挙げたことも、オーディションでの会話がきっかけでした。私たちが接する世界はまだ小さく、見えていないこともたくさんあります。パートナーになってくださる企業とは、そういった私たちが見落としているポイントをご教授いただきながら、Win-Winの関係を築くことができたらいいなと思っています。