アスリート向け生体力学センサー技術による筋肉疲労測定システム

会社紹介

私たちは“ロボット触診”によって筋肉の疲労度を測定し、アスリートの怪我の予防や適切なトレーニングの実施を支援する、スポーツアナリティクス事業を展開しています。実証実験には第一線で活躍するプロサッカーチームにご協力いただいていますが、私自身はもともと特別にスポーツが好き、というわけではありませんでした。
ともに会社を立ち上げた取締役の菊田氏に誘われ、初めてプロサッカーの試合を観戦しに川崎の等々力スタジアムを訪れたことが、この世界にのめりこむきっかけとなりました。
スタジアムに入る前から周辺は熱気に包まれ、あふれるエネルギーに圧倒されました。試合がはじまると老若男女問わず、全員が立ち上がって熱い声援を送っています。ストレスや気苦労を抱えながらも、日々を懸命に過ごしている人たちが、この時ばかりはすべてを忘れ心から熱狂しているようでした。改めてスポーツの持つパワーを実感した一日となったのです。スポーツには人生を変える力があります。プロのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、人々に勇気と希望を与え続けられるようにサポートしていきます。

基本情報

タグル株式会社

〒979-2162
福島県南相馬市小高区飯崎字南原65-1

学生時代から「いつか起業したい」という夢があり、ベンチャー企業やコンサルティング会社で新規事業の立ち上げなどを任される傍ら、個人事業主としてアプリ開発などを行っていました。次第に「もっと面白いことを世の中に仕掛けたい」という気持ちが強くなり、ベンチャー企業で勤務していた際にお世話になっていた菊田氏に相談することにしました。自身で会社を経営していた菊田氏は、その場ですぐに「じゃあ一緒に会社をつくろう」と言って私の背中を押し、急遽タグル株式会社がスタートすることになりました。
そのころ課題を感じていた分野が、日本の特許技術でした。国内の技術者が革新的な基礎技術を開発しても、なかなか活用される場がなく、海外に安い値段で流れてしまっているというのです。その技術を何とか活かすことができないかと考えて、全国の大学で生み出された技術と、企業のマッチングを支援する産学連携の見本市に参加しました。そこで出会ったのが、のちに我々の製品のコア技術となる「生体の柔らかさ特性のセンシングと情報処理技術」です。
開発したのは大阪大学の研究チームで、私はこの技術に大きな可能性を感じました。というのも、日本サッカー界のレジェンドである選手のひとりが、「疲労を測定できるデバイスがほしい」という話をしていたことがあったからです。プロの選手が怪我をすれば、チームの損失は莫大なものになりますし、選手生命にも大きく影響します。海外のプレミアリーグの事例を調べると、怪我の予防は世界的な課題になっていることが分かりました。
もし筋肉の疲労度を数値化できたら「怪我の可能性がある数値が出ているから休ませよう」という監督やコーチの判断材料になります。そこでさっそく、菊田氏が自身の企業でスポンサーを務めているプロサッカーチーム「おこしやす京都AC」で実証実験を開始。大阪大学、おこしやす京都、弊社の3者で共同研究を始めることになりました。

大きな特徴は、筋肉の疲労度を数値化することでスポーツ選手の怪我の予防とコンディション管理ができることです。12秒という短時間で特定の筋肉の疲労を測定でき、時系列での変化を把握することが可能です。また、怪我をしやすい部位ごとの疲労度をピンポイントで表示し、過去のデータと比較することもできます。
選手は主観で自分のコンディションを把握していますから「問題ないので試合に出場したい」と言いますし、無理をさせたくないコーチとの間で折り合いがつかないケースがしばしばあることがわかっています。チームとしても「試合には勝ちたいが、大事な資産である選手に絶対怪我をさせたくない」という想いがあります。そのようなジレンマに陥ったとき、数値化された筋肉の疲労度を判断する際のポイントにできるのです。この点についてお話しすると、現場の監督やコーチの方々から興味を持っていただけることが多いです。

データを活用して選手に最高のパフォーマンスを引き出してもらうことが、スポーツアナリティクス事業の使命です。だからこそ今後は専門のデータアナリスト人材を獲得し、サービス面を強化していきたいと思います。収集したデータを分析し「この数値が出た場合、この部位は怪我のリスクが高まる」といった傾向が明らかになれば、現場のニーズに応えるサービスを提供できるようになるでしょう。
そして会社組織としての課題は、現状メンバーが経営と財務担当の2名のみという体制に限られていることです。営業やデータ分析を担う人材が不足しているので、今後の成長に向けてどこを優先して強くしていくかを検討しています。特にデータは当社のコア技術ですから自分たちの手でやらなければ意味がありません。そのためデータアナリストの獲得やスポーツアナリティクス企業との連携を進めながら、専門の部署を早急に立ち上げたいと考えています。

まずは国内のプロスポーツリーグへの導入を進め、続けて海外市場への展開をめざします。その後、そこで得た利益を活用して廉価版のプロダクトを開発し、アマチュアスポーツや高齢者のリハビリといった分野へ進出する計画です。
ゆくゆくは、疲労した筋肉と怪我のケアについての具体的なソリューションの提供も検討していきたいです。こうした取り組みには医療行為が含まれるため実現までのハードルはありますが、現場からは「筋肉がこのような数値を示していますが、どのようにケアすればいいですか?」といった具体的なアドバイスを求める問い合わせも増えており、ニーズの高まりを感じています。
一方で、そのためにはトレーナーとメディカルチームの垣根を取り払い、シームレスな協力体制を図ることが重要です。選手のパフォーマンス向上をめざすトレーナーと、怪我のケアを担当するメディカルチームが連携できる仕組みがなければ、サービス展開は難しいでしょう。そこで、この課題をチームに提起し解決策を提示するとともに「こうした練習が適しているのではないか」といった具体的な提案まで行うことで、我々のサービスをさらに広めることができると考えています。
この取り組みは理学療法士や鍼灸師といった、医療系専門職の方々のステータス向上につながる可能性もあります。可視化されにくい医療系のスキルは評価が難しいのですが、個々の専門職の方が得意としているケアや部位に対してマッチングができるようになれば、評価が見えやすくなるはずです。

まずは先述のように、データアナリティクスを専門とする企業、もしくは専門家の方とパートナーシップを結びたいと思います。また、今後実現したいソリューションに対してアライアンスや事業連携、もしくは情報交換からでも始められる医療系の専門家の方ともつながりたいですね。神奈川県や川崎市にいらっしゃるスポーツ好きのドクターなどが、我々の事業に興味を示してくださったらうれしいです。神奈川県は情報産業が集積しているエリアですし、大きなスタジアムやスポーツ施設がたくさんあるので、新しいつながりが増えることに期待しています。

Hama Tech Channel記事より引用