フレイル予防支援対話AI 『安心日記』

会社紹介

フレイルとは、加齢などにより心身機能が衰え、要介護の前段階といわれる状態のことです。フレイルの放置が原因で認知症を発症したり、寝たきりに移行したりするケースも増えており、大きな社会課題になっています。
現在、65歳以上のシニア人口約3,600万人のうち、約50%の方々がフレイル、またはプレフレイル(フレイル予備軍)だといわれています。さらに50 代の方も50%超がプレフレイルであるという驚くべき調査結果もあります。しかし、裏を返せば「フレイルを予防すれば健康的な老後を過ごせる」ということですし、適切な対策をすることで健康な状態に戻れる可能性もあります。そこで私たちは、得意分野である音声対話AIの技術を活用し、フレイルの予防支援に取り組むことにしました。
日常の行動を起こすことが億劫になって外出の機会が減り、社会とのつながりを失ってしまうことがフレイルの入り口です。私たちの開発した『安心日記』は、喋ることで日常的な行動を促し、活力を取り戻せるようサポートするフレイル予防のための支援対話AIです。誰もが住み慣れた地域、住み慣れた家で、楽しい老後を過ごせる社会を目指して、このサービスを広めていきます。

基本情報

株式会社emotivE

〒105-0004
東京都港区新橋2丁目16−1 ニュー新橋ビル 9F

会社員時代から対話AIの開発に取り組んでいましたが、「もっと人の心を揺さぶるような会話をAIで実現したい」という想いがあり、2018年に自分で会社を立ち上げました。起業してからは、当社の中核製品である認識モデルAI「OMOHIKANE®」を活用し、接客やエンターテインメントの領域でソリューションを提供してきました。
フレイルを予防する支援対話AIの開発に着手することになったのは、ある仕事でシニア世代が抱える「孤独」に触れたことがきっかけでした。某エンターテインメント企業と共同で、人気キャラクターと対話できるAIの開発に取り組んでいたのですが、実証実験の際にメインのファン層である年配の女性の多くが、寂しさを感じていることが分かったのです。それを機に、高齢者問題に目を向けるようになり、芋づる式にさまざまな社会課題が見えてきました。そこで気づいたのは「自分にもいずれは心身共に衰える日が来る」ということでした。「明日は我が身」とよく言いますが、それまで老いを自分事として考えたことがなかったことに気づきました。まわりの人間にも「自分の老後についてどう考えているか」と問いかけてみましたが、健康な現役世代には、やはり想像しにくいようでした。その時から健康で楽しい老後を過ごすためにできることを模索するようになり、情報を集めていて出会ったのが「フレイル予防」というキーワードでした。最も大切なのは、認知症や寝たきりになる「手前」で止める努力をするということ。そのために外出や人とのコミュニケーションを促すような対策が必要だということを知りました。そこで、この課題の解決に当社の対話AIが活かせるのではないかと思いつき、フレイル予防支援対話AIの開発をスタートすることになりました。

アプリを通じてAI と会話をすることでシニア層の行動変容を促し、フレイルの予防を支援するサービスです。AIとの日常的なおしゃべりから、「喋る→食べる→口の強化→動く→抑うつ離脱→健常」という流れを生み出し、外へ出かけたり、人と会ったりする機会を増やします。大きな特徴は、個々の対話設計しだいで、AIの記憶とそれに基づいた応答を変更することが可能となっていることです。これにより、利用者の興味などを引き出したり、利用者がどのような嗜好を持っているのかを判断して、嗜好の単位で応答を出し分けたりすることができるのです。また、間違った応答が許されないもの、例えば、ある種のイメージが定着しているキャラクタなどへの対応を可能とする一方で、生成AIとの連携も行なっていることも強みです。現在、多くの方に試用していただいておりますが、ターゲットとなり得る層の約8割の方から「継続したい」との評価をいただいています。

このサービスを広める上での大きな障壁は、フレイル予防の重要性が世の中にあまり広まっていないことにあると考えています。多くの方にフレイルの危険性を知ってもらい、「お金を払ってでも予防する価値がある」ことだと認識していただかなければ、このサービスを広めていくことはできません。とはいえ、我々のようなベンチャーが1社で頑張っても成し遂げられることではありませんので、影響力のある国や自治体がもっとこの問題に着目し、フレイル予防の重要性を周知してくれることに期待しています。また自治体や社会福祉協議会などがシニアの外出機会を創出するようなイベントも開催していますので、AIとの会話を通してそこへの橋渡しができるような取り組みにもチャレンジしていきます。
現在、2つの大学医学部のリハビリテーション科にご協力いただき、エビデンス獲得に向けた動きがスタートしました。当社のサービスがフレイル予防につながるという客観的根拠を提示することができれば、世間の反応が変わってくるかもしれません。
幸いにして、今はシニア世代でも多くの方々がスマートフォンを使うようになっていますし、当社のアプリはタップするだけで簡単に操作できますのでご満足いただける自信はあります。ただ、まずはアプリをインストールしていただけなければ始まりませんので、フレイル予防の重要性と同時に、このサービス自体を周知できるような方法について探っていく必要があります。現在、いくつかの自治体に採択をいただいていますので、そこでしっかりと実績を出していくことが、その第一歩になると考えています。

『安心日記』では、利用者それぞれの興味を記憶し、個々人に合わせた対話での行動変容を目指していますが、実のところ「人の行動を変えるための対話の技術」というものがしっかり確立されているわけではありません。その技術や手法に私たち自身でたどり着くため、試行錯誤を重ねています。確実に行動変容に結び付く対話の技術を見つけて蓄積し、サービスに実装していくことを目指します。
また、このサービスは全国の自治体への導入を見据えており、自治体事業に長けた大手法人の力を借り、2025年は2つの自治体で実証実験を開始するべく、準備を進めています。そして2028年の12月までに大手法人による取り扱いを中心に自治体等と75契約を締結することで、利用者を20万人まで増やすにはどうしたら良いか検討中です。それと合わせて、さらに満足いただけるサービスにするために、アプリの改善にも取り組んでいきます。AIの話し方をもっとリアルにすることや、フレイル予防支援に特化したときに必要な機能の実装を目指して、技術力の向上に邁進していきます。

先述のように、フレイル予防の重要性を周知していくことがサービス拡大への鍵となります。そのためには、私たち自身が国や自治体へ働きかけていくことも必要です。川崎市には、国や自治体と強いネットワークをお持ちの企業さまも多いと思いますので、ぜひ私たちのパートナーになっていただき、フレイル予防という重要な社会課題があること、我々がその解決に資するサービスを提供できるということを、一緒に広めていただけたらうれしいです。