中小企業の脱炭素をI T で支援する

会社紹介

私たちは企業のGX(グリーントランスフォーメーション)を支援し、社会全体のカーボンニュートラルをめざすスタートアップです。2020年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言してから、大手企業や上場企業は脱炭素へ向けて舵を切りはじめました。しかし日本の企業総数99%以上を占める中小企業を見ると、まだその意識が浸透しているとはいえません。とはいえ、これはサプライチェーン全体で取り組まなければならない課題です。これからは、CO2排出量を把握しておかなければ上場企業と取引ができなくなったり、国や自治体から排出量算出を義務付けられたりする日がくるかもしれません。とはいえ「脱炭素といわれても、具体的にどうしたらよいか分からない」と頭を悩ませている経営者はたくさんいます。そんな方々のために、企業のCO2排出量を簡単に見える化できるSaaS「タンソチェック」を開発しました。ほとんどの機能を無料で使えることや、直観的に操作しやすいUIで、初めて取り組む中小企業も導入しやすいツールになっています。CO2排出量の算定を入り口としてGXを後押しし、カーボンニュートラル達成の一翼を担っていけたらと思っています。

基本情報

株式会社タンソーマンGX

〒107-0062
東京都港区南青山3丁目3−3 リビエラ南青山A Working Park EN

私が独立したのは今から10年ほど前になります。それまでは、証券券会社で営業経験を積んだのち、5年間ほど個人事業主として中小企業のDX化を支援していました。そのときのクライアントから「CO2排出量をチェックできるシステムをつくれないか」というご相談をいただいたことが、この事業を立ち上げるきっかけです。これまでに5社ほどの会社を設立し、事業を立ち上げてきた経験から、ビジネスには「市場選定」が非常に重要であると感じています。トレンドが来てから動くのでは遅すぎで、時代の潮流を見定めつつ、しかるべきポジションを取っていくことが事業を成功させる秘訣ではないでしょうか。当時、脱炭素を意識する企業はまだわずかでしたが「これからはこの波が来るだろう」と感じたことを覚えています。100年後の世界史の教科書には、「2020年代はカーボンニュートラルの始まりの時代だった」と書かれているかもしれない。そう考えて「脱炭素」の市場に乗り出すことに決めました。そこから「本気で脱炭素を実現したいのは誰か」を改めて考えました。おそらく、最もカーボンニュートラルを推し進めたいと思っているのは、企業ではなく日本政府です。政府はGXの推進に150兆円という莫大な予算をかけると発表しました。このお金は、太陽光発電やEV車など、脱炭素への技術開発に向けたものでもありますが、その技術を市場に展開するための補助金や助成金にも使われます。補助金を使ってGXに向けた設備投資を積極的に行ってほしいと期待していますが、そのためには企業のCO2排出量の算出が必須です。これがとても複雑で手間がかかるため、補助金申請に二の足を踏んでいる企業が少なくありません。そこで、排出量の見える化を容易にし、企業の脱炭素経営を後押しするための「タンソチェック」を開発するに至りました。

「タンソチェック」は、企業のCO2 排出量を簡単に可視化できるプラットフォームです。算出した排出量をもとに効率的なCO2削減計画の立案までを一元的に行い、脱炭素に関わる補助金の申請を容易にします。基本機能は無料なので、脱炭素経営の入り口として利用しやすいことも特長です。「タンソチェック」を導入することで再生エネルギーへの切り替えや省エネ設備導入へのハードルを下げ、シームレスに脱炭素に導く仕組みをつくることをめざしています。CO2排出量算定ツールを提供する企業はほかにもありますが、大手企業に向けた高額なシステムがほとんどです。中小企業が無料で気軽に使えるツールは「タンソチェック」以外にありません。ゆくゆくはこれを、税理士や会計事務所、コンサルタント、中小企業診断士などの専門家が、自身のクライアントのために使えるようなツールにしていきたいと考えています。

まず前提として、今の脱炭素を取り巻く現状に課題があります。カーボンニュートラルの活動をブランディングの一つとして掲げている企業もありますが、脱炭素が企業の売上や利益につながる仕組みはまだできあがっていません。そして本気で脱炭素を実現するのであれば、取引先も含めたサプライチェーン全体で取り組む必要があります。そんな状況の中、政府は予算を確保して、それを達成しようとしている。ある意味、供給に需要が追い付いていないバランスの悪い状態です。そこを私たちがつなげて、国と企業が同じ方向を向けるような仕組みをつくっていきたいと思います。そのために今は、さまざまな自治体と組んで好事例をつくることに注力しています。例をあげますと、鹿児島市と連携して市内事業者約10社にタンソチェックを導入し、脱炭素に向けたロードマップを作成しました。これを軸として「脱炭素に取り組めば企業価値が上がり、利益につながる」という事例を増やしていければと思っています。組織としては、人材の強化という課題があります。今はごく限られた人数のみで運営していますが、脱炭素化に向けて社会全体から意識を変えていくためには、「タンソチェック」をさらに使いやすいツールにし、多くの企業に使っていただく必要があります。そのためにも、さらに優秀なスタッフの増員が必要です。また、自治体や企業との交渉や提案ができる者が現状私一人だけなので、ともに経営を担える人材の確保や育成も急務となっています。

大きな目標は5年後のIPOです。我々はVCから資金調達を受けているため、出口戦略としてM&AかIPOを選択することになりますが、より売却金額の大きいIPOを選びたいと考えています。それまでに事業を黒字化させ、株式公開の時点で売上50億円を達成することを目標に掲げています。株式を公開すれば、より多様性のある資金調達ができるため我々の実現したいビジョンに近づくことができ、バリュエーションを上げながら事業を進めることができるとも考えています。また「タンソチェック」はサプライチェーン全体でのCO2算定を推進しているため、取引のある企業同士がつながりSNSのようにファイルを共有しあったり、それぞれの排出量データをリアルタイムで集計したりできる機能を設けています。将来的には、エネルギー情報や脱炭素につながるデータを、効率的に収集するなどの機能も増やしていきたいと考えています。今後はエネルギーの使用量を、国や自治体に報告することが義務付けられる未来が来るかもしれません。そうなったときも「タンソチェック」に入力すれば簡単に報告できるような機能を追加することも視野に入れています。

今回の受賞をきっかけに、川崎市をはじめとした神奈川県のさまざまな自治体や、地域の金融機関と連携を組ませていただき、一緒にゼロカーボンシティをめざした活動ができればうれしいです。この事業を通して、脱炭素に向けた補助金の申請やファイナンスのお手伝いをさせていただく機会も増えましたので、私たちとの連携は金融機関側にとってもメリットがあると考えています。補助金申請をメインにしているCO2算定ツールは「タンソチェック」以外にありませんので、これを私たち独自の強みとして発信していきたいですね。