読字困難・ディスレクシア向け 文字を“読む”をサポートするアプリ

会社紹介

私たちファシリティジャポンは、フランス発のソーシャルベンチャー「FACIL'iti」の日本法人です。「すべての人にとって使いやすいウェブサイトを実現する」というビジョンのもと、利用者が自分のニーズに合った設定にパーソナライズ表示できるサービスを提供しています。その取り組みの中で誕生したものが、ディスレクシア(読字困難)の方の『読字』をサポートするアプリ「MYdys」です。

ディスレクシアとは、文字の認識だけを苦手とする学習障害の一つです。日本では全人口の約8%の方が抱えていると言われていますが、日本語特有の言語構造の影響で、これまでは表面化しにくい状況にありました。しかし近年、英語教育の推進や教育現場での認識が進み、この障害に悩む方々の存在が知られるようになってきています。そういった状況から「日本での支援ニーズも高いのではないか」という声が上がり、日本でもこのアプリを提供することになりました。

私たちは、ディスレクシアという社会課題が存在することを多くの方に知っていただくことや、ウェブをはじめとするすべてのデジタル機器を誰もが使いやすいものにしていくことをめざしています。そして誰一人取り残されないインクルーシブな社会を実現することが目標です。

基本情報

ファシリティジャポン株式会社

〒102-0084
東京都千代田区二番町9-3 THE BASE麹町

学習障害というものへの理解は少しずつ社会に浸透してきましたが、親や学校の先生から「努力不足」「ふざけている」と決めつけられていた子どもたちの中には、大人になってから実はディスレクシアだったのではないかと判明するというケースも少なくありません。頑張っても文字が読めず、「学びたかったのに、文字が読めないことでさまざまな機会を逃し、進路を絶たれてしまった」というお話もよく聞きました。
その症状は文字が歪んで見えたり、文字がぎゅっと重なって見えたりすることなど症状は十人十色です。私がお会いした方の中には「活字がとにかく苦手」「白い紙に印刷されたものは光って見えて文字が読みにくい」という方もいらっしゃいました。そういう場合は、文字の間隔を空けたり、表示の仕方を少し変えたりするだけで、読みやすくなることもあります。

ディスレクシアの認知は昔より広がっているものの、当事者やその親、支援者の方々にお話を聞いてみると、まだ十分な対策が取られずに困難を抱えている現状が見えてきます。運よく理解のある指導者に出会えたことで、支援を受けながら夢をかなえた方もいらっしゃいますが、自身がディスレクシアだと気づいていない方も多く、二極化が進んでいるという状況です。

そのような格差をなくすために、私たちは「MYdys」を開発しました。フォントを自分にとって可読性の高いものへ変更したり、コントラストを調整したりと、少しの工夫をするだけで文字が読めるようになる方たちがいます。アプリを多くの方に利用していただきたいという想いはもちろんありますが、「MYdys」をきっかけに、ディスレクシアについての理解がもっと広がってくれることに最も期待しています。その結果として、自然に需要が高まってくれることが私たちの理想です。

「MYdys」は、アプリを通して撮影した画像から文字を認識し、表示や色、文字の大きさ、フォントの種類、行間・文字間隔などを調整して表示することが可能です。また、表示を変えても読みづらいと感じる方のために、文字を音声で読み上げる機能も備えています。PDFデータであれば、撮影せずにそのまま読み込むこともできます。

現在の日本におけるディスレクシアへの支援は、読み上げ機能や音読を中心とした方法が主流です。教育現場でも、音声を使った学習支援が推奨されることが多いようです。しかし先述のように、ディスレクシアの症状や困難さの程度は個人によって大きく異なります。軽度の場合は、文字の表示を読みやすくカスタマイズ(可読性の高いフォントへの変更や文字や行の間隔、大きさ、色などを調整)するだけで読みやすくなる方もいます。また、幼少期の段階でディスレクシアの傾向があることが分かった場合、自分の適した文字の表示で読むことがトレーニングにつながり、学習への困難を最小限に抑え読みのスキルを発達させることができるとされています。ディスレクシア当事者の方からは、「教科書に使われている明朝体が特に読みづらい」という声をたくさん聞きますので、学校などの教育現場に導入していただくことで、子どもたちの学びの選択肢を広げることにもつながると考えています。

日本版はまだ実証実験中なので、今は一人でも多くの人に試していただき、さまざまな意見を集めつつ機能の向上をめざす段階です。いずれは、デジタル教科書への搭載や、大手プラットフォームとの連携なども模索してきたいと思っています。

当事者やその親にこのアプリをご紹介すると、非常に興味を持っていただけますが、一方でディスレクシアという障害があることを知らない方もまだ多くいらっしゃいます。ビジネス的な視点だけで語られることもあり「これでどれくらい儲かるの?」「このアプリを使えば治るってことだよね」といった、当事者や関係者からすると少し的外れに感じる意見を耳にすることもあります。こうした認識のずれは、ディスレクシアに関する知識や理解が十分に広がっていないことが原因でしょう。当事者以外の方にこの課題の本質を知ってもらうことに、いまだ高いハードルを感じています。

とはいえ、教育現場へのニーズは非常に高いと考えています。そのため、学校の先生や教育関係者の方々に、私たちのソリューションを広く知っていただけるようさまざまなアクションを計画中です。また、ディスレクシア支援を国の施策として推進してもらうことも重要だと考えており、政府や省庁への働きかけも進めていきます。

その際には、具体的なデータや事例に基づいて話を進めることがポイントになります。学校や塾などの教育現場にご協力いただきながら導入実績を積み上げ、「多くの子どもたちが困難に直面しているにもかかわらず、十分な対策が行われていない現状」を示せる事例を整えていきたいと思います。

フランス法人では、リリースから1年半で約10万ダウンロードを達成しました。この実績を踏まえ、日本では初年度10万ダウンロード、5年後には30~40万ダウンロードを達成することを目標としています。

また法人向けライセンスの販売も視野に入れており、発達障害児向けの学習塾や学習障害支援を行う団体、さらには放課後デイサービスへの導入も計画中です。こうした現場で私たちのソリューションを幅広く認知していただくことで、最終的な目標である教育現場や公的機関へのアプローチにつなげていきたいと考えています。

組織としての目標はスタッフの増員です。日本法人のスタッフは現在5名と少人数であり、まだまだ手が足りません。特に技術職の増員は急務です。より質の高いサービスを提供し、顧客満足度を高めるためにも、国内でサービスのメンテナンスや保守を担える体制を整えたいところです。

デジタルサービスやプラットフォームを展開する企業さまと協力することで、お互いにメリットのあるパートナーシップが実現できると考えています。

例えば、私たちが持つ知識や技術を活用していただき、高齢者、視覚に困難を抱える方、ディスレクシアの方など、さまざまなユーザーに配慮した見やすい表示機能を製品やサービスに初期搭載していただければ、多くのお客さまに選ばれるものになっていくかもしれません。

そうなれば、私たちがめざす「誰一人取り残されないインクルーシブな社会」の実現にも近づくことができます。そういう協力関係を築くことができたら、非常にうれしいですね。