第二のマイナンバーをつくる「proovy」

会社紹介

私たちは既存プロセスの効率化、眠っているデータ資産の活用に対し最新技術を用いて支援するスタートアップです。当社の事業の核となっているのが「DID/VC」と呼ばれる技術です。近年、保有する個人情報の厳重な管理が求められるようになりましたが、一方で生成AIなどの進化により、画像差し替えなどの不正も容易に行えるようになってしまいました。こうした状況の中で、データの信頼性をどのように確保していくかは、現代社会における重要なテーマとなっています。DID/VCは、まさにこの課題を解決するために生まれた技術です。データを電子的に検証することで偽造が極めて困難になり、利便性と安全性の両立を図ることができます。

当社はこの仕組みを活用し、銀行が保有する顧客データを使って本人確認を行うことができるサービスを開発しています。DID/VC技術を用いてユーザーが自身のデータを管理できるアプリ「proovy」を展開しており、その一機能としてご提供しています。銀行の本人確認は非常に厳格で、第三者がなりすまして口座を開設するといった不正が起こりにくいのが特徴です。この高い信頼性を他サービスの本人確認に活用できるようになれば、業務の効率化やセキュリティの向上につながります。私たちは、「proovy」を通じて、安全でスムーズな本人確認を実現し、より便利で信頼性の高いデジタル社会の構築に貢献していきます。

基本情報

株式会社Recept

〒170-0005
東京都豊島区南大塚2丁目38-1
リードシー大塚ビル7階 7-19

起業をめざした理由は、前職での経験が大きく影響しています。私は新卒で入った大手銀行で、次世代のインターネットと呼ばれるWeb3(ウェブスリー)の領域に関わっていました。当時はこの領域で起業する若者が多く、銀行員として彼らと接しており、事業創出へ打ち込む姿に刺激を受けました。また、学生時代にスタートアップのインターンシップへ参加したことも私にとって貴重な体験の一つでした。優れた技術やスキルを持つ精鋭が自らの力で収益を生み出し、そのお金が会社の売上や自身の報酬に直接反映される。そんな環境で輝く人たちを間近に見ていたので、自分の置かれている立場にギャップを感じることがありました。

そして何より私をワクワクさせたのは、Web3の持つ大きな可能性です。従来の仕組みとは異なる新しいエコシステムを構築可能なWeb3の発想は魅力的でした。現在、当社のコア技術となったDID/VCも、Web3と密接な関係を持つ技術です。

さまざまな経験や興味が後押しとなり起業を決めましたが、こうした未来志向の新しい領域に挑むのであれば、相当な知識のある技術者に協力してもらう必要があります。そこで、大学時代の同級生でありエンジニアとして活躍中だった現CEOの中瀬に「一緒にやってほしい」と声をかけ、ともに会社を立ちあげることになりました。

サービスの特徴は大きくわけると3つです。1つ目は、デジタル化による利便性の向上とコスト削減が期待できること。本人確認書や画像データを用意することなく、スマートフォン一つで本人確認を完了させることができるため、事業者はユーザーに負担をかけずにより信頼性の高い情報を取得できます。また、学校などの教育機関が紙の学生証を発行する場合、コピー機のリース代、紙代、インク代など、相応のコストがかかりますが「proovy」に切り替えていただければ、大体8割ほどのコスト削減が見込めます。

2つ目のポイントは、より安全性に配慮できることです。データ連携の分野において欠かせない、高度なセキュリティとプライバシーを確保しながら、安心してデータを流通させることが可能になります。

3つ目のポイントは、国境を越えてつながれることです。DID/VCはヨーロッパなどではすでに標準的な技術となっているため、サービスやプラットフォームの連携が国を越えてできるようになります。学校などの教育機関にとっては、海外からの留学生のデータ互換が可能となり、スムーズな受け入れを実現できます。

DID/VCは、特に「金融」「教育」「行政機関」の3つの分野ととても相性の良い技術です。マイナンバーカードや運転免許証のシステム管理と非常に相性が良く、他の技術と比べても高い親和性を持っています。しかし、金融や教育、行政機関などにはすでに既存のシステムが根付いており、それぞれに専属のベンダー企業が存在します。そのため当社としては、それぞれの分野のシステムを手掛けるベンダーと連携することが最適だと考えています。ベンダーの方々は常にクライアントに提案できる商材を探しているため、当社の技術をライセンス提供する形で導入してもらうのが理想的です。その反面、当社の知名度が上がりにくいことや、ベンダー側が独自にシステムを構築してしまう可能性があるといった課題が考えられます。これらをどのように克服するかが、今後の重要なポイントとなるでしょう。

組織としての課題は、信頼性の確保です。私たちのビジネスでは、金融機関のデータや教育機関が保有する生徒の情報などを活用させていただきます。しかし、まだ実績の少ないスタートアップであるため、信頼を得ることが難しい場合もあります。だからこそ、他の企業と比べても見劣りしない組織をどう築くかが、今後の戦略の要になります。そこへ向けて、システムの堅牢性を確保することはもちろん、ヨーロッパの団体が発行する国際認証をアジアで二番目に取得するなど、客観的な信頼性を担保できるアプローチを積極的に進めています。

加えて、社会人経験が豊富で信頼のおける年長のメンバーを迎え入れる方針です。そうすることで、「若いだけのスタートアップ」ではなく、確かな組織体制を持つ企業であることを示し、金融機関をはじめとする各方面から信頼される存在へと成長していくことをめざします。

現時点ではまだ広く浸透していないDID/VCですが、2025年からは市場が大きく成長すると予想しています。すでに当社はDID/VCについて検索すると必ず名前が挙がってくるポジションを確立していますので、この成長の波にうまく乗ることができれば、自然と私たちの事業も拡大していくだろうと考えています。2025年は、年間売上4億円の達成が目標です。そして4年後にはIPOも視野に入れられる規模と内部体制を整えていきたいと思っています。

海外に目を向けると、DID/VC市場はすでに一巡しており、競合の増加や、クライアント企業による内製化が進んでいます。その結果、停滞や衰退に直面し、失速してしまう企業も少なくないようです。しかし一方で、その後も成長を続け、ユニコーン企業へと成長した企業も存在します。私たちも、時代の変化に対応しより利便性の高いソリューションを生み出していかなければなりません。

前述のとおり、DID/VCは「金融」「教育」「行政機関」と非常に相性の良い技術です。金融系のクライアントとは一定の実績を築いていますが、教育や行政機関へのアプローチはまだ十分に進んでいません。最近は「メタバース市役所」を導入している自治体もありますので、川崎市や、行政機関向けのDX推進を手がけるシステム開発企業さんとパートナーシップを組めればうれしいですね。今回の受賞をきっかけに、新しい展開が生まれることを楽しみにしています。