第128回最終選考会(令和3年9月24日開催)
ビジネスアイディアのテーマ
ビジネスアイディアの概要について
ここ数年の気候変動は人間活動だけでなく、植物や昆虫など生き物全てに厳しい状況を強いています。中でも養蜂業は、周辺植物の状況とミツバチの健康の双方が関係するため、大きな影響を受けています。例えば開花状況とミツバチの活動の時期が合わなくなっている、長雨によりハチミツの収量が激減し、ミツバチの健康に大きな影響が生じているなどです。
そこで、弊社の開発したハチミツ植物種メタゲノム解析を用い、蜜源植物の植生分布を網羅的に把握することで、巣箱の設置数、設置地区、設置時期の最適化やミツバチの生態の把握、更に収穫したハチミツの高付加価値化・ブランディングに活用することを提案します。
また分析試料をハチミツだけでなく、空気中のバイオエアロゾル(生物由来の微細粒子)等に広げつつ、同時に判別対象を植物以外の哺乳類や昆虫に拡大することにより、汎用性を高め複雑な生物多様性を可視化したいと考えています。
これにより2030年に向け、生物多様性への貢献が企業活動に求められる中で、生物多様性に取り組むより多くの企業のサポートを行いたいと考えています。
新規性・優位性について
メタゲノム解析を植物に応用し、本格的に商業化したのは弊社が国内で初めてです。弊社では分析が難しいハチミツからのDNA抽出法やPCRを行う際の最適な遺伝子領域の設定等、独自の検討を加えました。更に種を同定する際の弊社独自のデータベース(公的データベースを元に作成)により、精密に植物種を把握することができます。
市場について
主なターゲット・市場の規模
【植物種メタゲノム解析】国内の養蜂家数は9700戸余りですが、仮にそのうち10%が1回分析を行うとすると、4,800万円になります。日本の養蜂業の規模は小さく、ハチミツの生産量は世界と日本では優に100倍を超える違いがあるため、海外展開を積極的に行います。
【バイオエアロゾル】令和2年度の「生態調査」国内入札案件は、694,210千円(弊社調べ)と分析対象を拡大することで応用できる「生態調査」市場は国内だけでも十分な規模があると考えます。
市場での競争力
植物性メタゲノム解析を用いて大学や研究機関のサポートを行っており、試験法としての堅牢性と高い成功率を有しています。公表されれば本調査法の有用性が専門家の中でも評価されると考えております。
また、判別のための高品質なデータベースを日々強化しており、分析結果の妥当性を検証し、随時、解析法のアップデートを行うことで市場でも強い競争力を発揮します。
さらには、人が行う従来の植生調査と比べ、簡易的且つコストも低く、また植物種に対する専門知識も少なくて済むため、利便性が高いと考えます。
実現性について
実施スケジュール
今年度、植物種メタゲノム解析を利用した植生調査を、複数の都道府県で実施しています。
今後、全国に拡大させ、大規模な植生マッピングを行いたいと考えています。バイオエアロゾルを対象にした分析は出来るだけ早期にプロトタイプを完成させ、関係者への提供を開始したいと思います。
実施場所
日本、海外の顧客から試料を送付してもらい、弊社研究室にて分析を行います。
実施体制
専任の研究開発チームと事業開発チームが連携し、ビジネス化します。
ビジネスパートナー
学術研究機関、養蜂関係、環境調査会社
リスクとその管理
研究開発の遅延リスクに対し、既に実験室の能力が上限に近いため、バイオエアロゾルからのDNA分析法の着手と同時に資金調達を行い、ラボを拡張したいと考えています。
また、精度の高い検査法には条件が統一された質の良いサンプルが必要です。弊社の強みと上手くマッチングする環境調査会社との連携を考えています。