第127回最終選考会(令和3年7月16日開催)
ビジネスアイディアのテーマ
ビジネスアイデアの提案者
プロジェクト ギガモスラ
芦澤 洋平
山梨県南巨摩郡
- かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
- NAGAYA起業家応援賞
- 宝印刷賞
【発表者 沢井 拓】
ビジネスアイディアの概要について
「次世代養蚕」と呼称する新しい養蚕技術と臨海コンビナートのアセットを結合し、大規模に超高効率の養蚕事業を実施します。
「次世代養蚕システム」の特徴は、特殊な人工飼料による省力・省人化、ロボティクスを活用した完全無人化です。
この「次世代養蚕システム」は、使用されなくなった原油タンクをはじめとする川崎市臨海部の遊休設備を活用して大規模に展開したいと考えています。
同システムは水・熱・電気を必要としますが、コンビナート内の製油所や製鉄所、火力発電所等で発生する排熱・排水に加え、割安な(最上流の)電気を活用することが特徴です。
また本事業は、養蚕の前工程である飼料生産も内包する一気通貫のものです。従来養蚕を大規模化するためのボトルネックの一つは蚕の餌となる桑栽培でしたが、上記のアセットに加え各施設で排出される二酸化炭素を桑(藻類の活用も検討)栽培の効率化に活用できるため、カーボンオフセットにも貢献可能です。
新規性・優位性について
本事業は中国古代殷王朝の時代から3,000年間農業であり続けている養蚕を、その前工程である桑栽培も含め工業化するというものであり、革命的な効率化を可能にします。
従来の養蚕は100回の桑収穫と蚕への給餌を必要とする労働集約型産業の典型であり発展途上国の産業ですが、本事業は人件費の安さという競争力の影響を受け難いという強みがあります。
国内の一部では人工飼料を用いた養蚕工場が稼働しておりますが、依然人手に頼る部分が大きいため次世代養蚕システムの優位性は揺るがないものと想定します。
市場について
主なターゲット・市場の規模
①繊維:シルク(繭)の世界市場は、生産ベースで2.5兆円(出典:「シルクレポート2019」)。
②昆虫タンパク質:米国では2023年に5千万ドル(出典:ベイカレント・コンサルティング2018年調査)と想定(肥料用途含む)。シルク収穫後に残るサナギは良質なタンパク質であり、現在はタダ同然で処分されていますが、有効活用することで「二度おいしい」ものになります。
③バイオ医薬品:2024年に40兆円(出典:協和キリン㈱HP)との観測があり、蚕の体を培養器代わりにして製薬コストを低減する研究が進んでいます。
市場での競争力
①:システム化により発展途上国の安い人件費は脅威ではなくなります。
②:伝統的にサナギが食されているタイのような国を例外として、従来価値の無かったものに光を当てる取り組みになります。昆虫食市場ではコオロギが一定の地歩を築きつつあり、先行他社に追随しつつ価値を発信することに注力します。
③高価な培養液を満たした巨大な培養器を用いる現行の手法に比べ、安価な製薬が可能です。
実現性について
実施スケジュール
要素技術(人手による次世代養蚕)は完成済みで、さらなる改良を実行中です。これを1~2年の内にシステム化し(プロトタイプ)、大規模化・商用化に取り組んでいきます。
実施場所
プロトタイプの開発場所は検討中ですが、商用機は上述の臨海コンビナートでの運用を想定しています。
実施体制
発起人である3名(養蚕技術開発担当:芦澤、事業化推進担当:沢井、マーケティング担当:多田)で取り組み中です。今後は研究協力者を中心に、従業員の受け入れも見込みます。
ビジネスパートナー
ENEOS株式会社
*同社の社内起業プログラムで沢井が受賞したことを発端とするものです。
リスクとその管理
要素技術の取捨選択や組み合わせが上手くいかなかったり、大規模化で予期しないエラーやトラブルが発生したりする可能性があります。
代表の芦澤は蚕の習性を知り尽くした伝統養蚕農家であり、彼の経験と勘をフル稼働させつつトライアンドエラーを繰り返しながら、実現に向けて邁進しています。