●本件は、独立行政法人放射線医学総合研究所(以下、放医研)ですでに開発され長年にわたって実現されている、多種類のPET分子プローブ(各種の疾患の原因となる遺伝子・タンパク質の活性制御を担う様々な化合物やその化合物に結合する標識化合物)の合成、品質検査、調剤処理、分注処理までの完全自動トータルシステム・装置の普及型製造に向けての研究開発、製造、販売、サポートサービス事業です。健康で安心して暮らせる地域社会を実現するために、がんやアルツハイマー病、脳梗塞など虚血性神経障害、炎症・感染症、疲労やストレス等の原因を早期に診断・発見し、また、治療効果の評価などを行う、いわゆるPET(Positron Emission Tomography)等を活用した分子イメージング分野の事業化・商用化の一環です。
●放医研にのみ存在する現行システムは、大型・高額なシステム機器で構成され、医学だけでなくあらゆる研究用対応のため、多くの機能が具備されていますが、本件により地域の中核医療の現場でも安全・安定的に使用できるよう、小型化・低価格化・使い易さを追求し、医療用に特化したプロトタイプをまず設計・製作します。プロトタイプ完成は来年度後半を予定し、設置場所及び実証試行は、将来のアジア市場への展開を視野に、琉球大学や国立病院機構沖縄病院等と共同にて沖縄県で実施致します。
●本件は同分野において産官学連携による事業化では世界初の研究開発プロジェクトであり、非侵襲性で患者に優しい診断を高品質で安全に実施するため、地域医療における診断技術の格段の向上が期待できます。また、患者だけではなく、PETを運営する医療機関等にとっても大きな意義があります。それは、PETプローブの半減期は極めて短く、透過性の強い放射線(511keV)を放出するため、製造や輸送が困難で、ほとんどの場合、PETを運営する病院などの利用施設で製造・品質管理まで行わなければならないからです。GMP(Good Manufacturing Practice)を考慮した安全なPETプローブが作業者の放射線被爆無しに完全自動で製造することも可能となるため、コストと安全面でPETの利用が飛躍的に増大することが期待されます。
●本件は、1)予防・診断・治療・予後ケアなど、既設病院やPET施設等の医療機能の強化、医業収益の向上、2)高比放射能合成技術の地域社会への展開、3)早期診断・予防医療システム、メディカルツーリズムなど新産業や雇用の創出、につながり、地域医療水準の飛躍的向上に資することが期待されます。また、治療効果が高く、副作用もなく、切らないため患者への負担も少ない「重粒子線によるがん治療」を今後一層普及させるために必須な機器・システムです。 |