第90回最終選考会(平成26年7月25日開催)
ビジネスアイディアのテーマ
ビジネスアイデアの提案者
株式会社あしたみらいず
柴田 猛
横浜市西区
- かわさき起業家優秀賞
【発表者 柴田 猛】
ビジネスアイディアの概要について
慢性腎不全で透析治療を受けている患者さんは、全国で314,180人に達しており、2013年は年間新たに38,024人が透析を必要としました。一方、30,708人の患者さんが亡くなっています。(日本透析医学会統計調査)
透析患者さんは、透析治療技術の向上によって長期生存が可能になりましたが、治療の長期化に伴う透析合併症の重症化や高齢化により、年間粗死亡率は約10%にも達し、治療の限界が見えてきました。この致命的な透析合併症の発症は、透析治療により惹起される酸化ストレスや慢性炎症が誘因であると指摘されていますが、これまで有効な治療手段はありませんでした。
近年、水素(H2)が、フリーラジカル、活性酸素種を選択的に還元除去し、酸化ストレスによる細胞・組織障害を軽減することが示唆されており、水素の医療応用の研究が進んでいます。そこで我々は、この水素を活用した次世代透析システムを開発し、臨床使用においても有効性を確認できたので製品化を目指します。
新規性・優位性について
透析液原液水素還元装置は、血液透析治療に使用する透析液A原液に、マイクロナノバブル化した水素ガスを気液混合し、酸化した透析液A原液を還元型に改質するための装置です。本装置は透析治療で生じる酸化ストレスを減らし、種々の透析合併症の軽減・予防を可能とするとともに、透析治療の質と安全性の向上および透析患者さんのQOL(生活の質)改善を図ります。
また本装置の特徴は、既存の透析システムに導入できる点にあり、簡便かつ安価に次世代透析システムの構築を可能にします。現在、透析メーカーに競合製品は無く、異業種から別手法の装置も提案されていますが、多くの機能的問題や高コストで普及するには至っていません。
市場について
主なターゲット・市場の規模
全国の透析施設4,264ヶ所が対象となります。
一般の透析施設への導入は、主要透析機関での1~2年の評価後となり、普及には4~5年の期間を要すると考えています。市場規模は160億円程度と予測されます。透析装置の導入には一般に5年リースが組まれるため、5~7年で買い替え需要が生まれ、年間25~30億円の安定市場が形成されると期待されます。
市場での競争力
透析治療効果に直結する革新的な技術であることから、早期の普及を目指し、企業間で競争するのではなく、技術を共有します。
戦略として、透析メーカー全てにメーカー個別のデザインに改良した装置のOEM販売を打診します。一方、装置の市場規模は必ずしも大きくないことから、利益幅を抑えた装置の低価格設定により、大手透析メーカーの参入障壁を高くします。ちなみに価格は、競合他社製品の半分程度の予定です。
実現性について
実施スケジュール
2013年6月に、30人用の試作品3台が完成。1台は臨床検証用(現在都内のX病院で臨床使用中)。もう1台は展示会や製品説明会に使用。残りの1台は製品のバージョンアップ用に改造し、性能向上の検討を行っています。
2014年6月、日本透析医学会学術集会・総会(神戸市)で学会発表、企業展示会で装置の展示を行いました。現在、50人用のバージョンアップ機を開発中で、2014年末からの販売を予定しています。
実施場所
株式会社オスモ
実施体制
1、株式会社 あしたみらいず (横浜市西区):1名
2、株式会社 オスモ (川崎市麻生区):2名
3、メディカルサイエンス株式会社 (横浜市長者町):0.5名
ビジネスパートナー
・株式会社オスモ(川崎市):透析液原液水素還元装置の構造設計、部材調達、組立製造、製品検査
・メデイカルサイエンス株式会社(横浜市):
1、販売戦略の立案・販売網の構築
2、経営支援
3、展示会の準備及び関連資料の立案作成
リスクとその管理
1、医療機器の薬事法:薬事法の定める血液透析システムの機器構成区分では、透析液供給装置以降の患者監視装置等の機器には薬事申請が必要です。しかし、透析液供給装置前に設置する本装置は、薬事法の適用外とされています。
2、大手透析メーカーとの競合を回避するため、直販せずにOEM販売します。