モデレーター、パネリスト紹介
藤沢久美
シンクタンク・ソフィアバンク 代表
国内外の投資運用会社勤務を経て、1995年日本初の投資信託評価会社を起業。2000年シンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。現在、代表を務める。政府各省の審議委員や日本証券業協会、Jリーグ等の公益理事といった公職に加え、豊田通商など上場企業の社外取締役なども兼務。1000社を超える経営者インタビューやダボス会議との連携を通じて、国内外の官民協働支援に取り組む。『最高のリーダーは何もしない』(2016年2月)など著書多数。
鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表
東京工業大学金属工学科卒業。藤倉電線(株)(現(株)フジクラ)にてエンジニア(電線材料の開発)、92年弁理士登録後、日本アイ・ビー・エム(株)にて知的財産業務を経て99年弁護士登録。2004年内田・鮫島法律事務所を設立、現在に至る。弁護士業に留まることなく、知的戦略、知財マネジメント、知財政策など多方面にかかる貢献に対して2012年知財功労賞受賞。オープンイノベーションに関連する複数の政府委員歴任、政策動向にも詳しい。
地方創生オープンイノベーションフォーラム
川崎市と川崎市産業振興財団は3月15日、中小企業の知的財産戦略をテーマに「地方創生オープンイノベーションフォーラム」を開きました。コロナ禍に対応してオンライン併用で企画され、会場約30人、配信で全国から約100人が参加しました。
「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」を執筆された シンクタンク・ソフィアバンクの藤沢久美代表をモデレーター に、 パネリストとして中小企業の知財マネジメントに精通する鮫島正洋弁護士にご登壇いただき、「 Afterコロナを見据えた川崎モデルの新展開に向けて」という内容について討論いただきました。
双方向の“新川崎モデル”へ 発展させる
今回はアフターコロナを見据えて、知財と広域連携をキーワードに議論を進めます。まず、弁護士の鮫島正洋先生に国の知財戦略の動きと、これまで川崎で中小企業の知財支援にどうかかわってこられたのかうかがいます。
10年ほど前に市から声をかけてもらい、ホームタウンの川崎市で知財戦略を一緒にやるようになりました。オープンイノベーションとは、イノベーションネタの創出主体と事業主体が分離することです。イノベーションがない社会や会社は衰退していきます。世間でいわれるオープンイノベーションは、他人が生み出したイノベーションを社会実装していくことであり、川崎が取り組んできた“川崎モデル”もそうです。
しかし、国が描くオープンイノベーションと、これまでの川崎モデルではイノベーションネタの流れが逆でした。小回りが利く中小・ベンチャー企業が生み出したネタを、体力のある大企業と一緒にグローバル展開するのが国の政策。これに対し、大企業が作り出したイノベーションネタを中小企業が活用して売り上げにつなげてきたのが川崎モデルです。実際に成果を上げただけでなく、川崎市は特許庁を巻き込んで全国展開し、川崎のブランディングにもつながりました。
ただ、これからは伝統的な川崎モデルを大切にしつつ、時流に合わせて逆の方向にも進めていかなければなりません。川崎にはこれまでの取り組みで大企業と中小企業が連携する気風が育ち、基盤ができています。双方向の“新川崎モデル”へ発展させたい。国が最終的に目指すオープンイノベーションの最終的なゴールは大企業の意識風土改革、アントレプレナーシップの回復でしょう。中小企業にとって、大企業と対等の立場でオープンイノベーション交渉をするためにも知財戦略は重要になります。
特許は何か新しければ必ず取得できる
鮫島先生はベンチャー企業の知財取得について、どんな印象をお持ちでしょう。
ベンチャー企業はすごくざん新なテクノロジーやビジネスモデルを持っているが、惜しむらくはそこから、どう特許を切り出して取っていくのか分かっていません。そこの部分を我々が担っています。多くの人が超ハイテクじゃないと特許を取れないと思っているが、特許は何か新しければ必ず取得できます。特許番号があればプレゼンテーションの訴求力も違ってきます。特許取得にかかる費用は80万円程度です。その費用対効果をどう判断するかだと思います。
知的取得を考えるプロセスの中での付加価値
知財取得を考えるプロセスの中で、鮫島先生は会社のビジョンを見直したり、戦略のさらなる拡大だったり、アドバイスされているのですね。
当然、そこまでの付加価値を出さなければなりません。中小・ベンチャー企業にとっては相当大きな費用になるので心がけています。
オープンイノベーションの定義は “新川崎モデル”に進化させること
それでは最後に鮫島先生、コメントをお願いします。
日本の最先端を走ってきた街として、川崎は次のステージに向けて走りださなければなりません。すでに口走ってしまいましたが、川崎モデルを双方向の“新川崎モデル”に進化させることが、まさにオープンイノベーションの定義そのものに該当します。これによって企業やステークホルダーに何がもたらされるのか、実証される場になればいいと思っています。